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2008/06/10  2:59 pm

ロジャー安川、単独インタビュー〜92thインディ500を振り返って〜


<US-RACING>


 スコット・ディクソンの初優勝で幕を閉じた2008年のインディ500。今年で92回目を迎えた伝統のレースに揃った33台のマシンの中に、ロジャー安川の姿はなかった。日本人最多記録を更新する6回目の決勝出場を目指していた安川は、予選3日目に31番グリッドを確保するも、翌日のバンプ・デイでまさかのバンプ・アウトを喫してしまう。2003年のデビュー以来、フル参戦がない時期にもインディ500だけは挑戦を欠かしていないだけに、今回決勝出場を逃してしまったことは大いに悔やまれた。
 失意のバンプ・デイから6日後、インディ500を翌日に控えたインディアナポリス・モーター・スピードウェイにて、US-RACINGはロジャー安川の単独インタビューを行った。参戦にいたるまでの経緯やバンプ・デイの後日談、そして今後の活動について安川から率直に語ってもらった。



Q:インディ・ジャパンの出場が決まった際、すでにインディ500へ向けた活動を行っていると言っていましたが、なぜ参戦の発表がここまで遅れてしまったのでしょうか?

ロジャー安川(以下:RY):「かなり以前からhhグレッグという家電屋さんのスポンサーが決まっていたのですが、それだけではフル・マンス戦うだけの資金を満たせませんでした。そこで他のスポンサーとも色々交渉していたんですけど、アメリカも景気が良くないので話がなかなか進まなかったわけです。チームはフル・マンスで戦いたいという意向があったので、フル・マンス戦えるだけのスポンサーを持ってくるドライバーを乗せるか、チーム自体にスポンサーが付けば乗れるという状況でした。
チームもスポンサーへの営業活動がうまくいかないなか、実はルーキー・オリエンテーションの二日目からフランク・ペレラが走る契約がまとまってしまいました。ですが、スポンサーからお金が送金されたのはルーキー・オリエンテーションが終わった後だったため、ペレラが乗ることはなく、送金されたお金をそっくり送り返すことになったのです。
その時点で他に空いていたシートが、ベックかフォイト、あとはアメリカン・ドリームのパノスでした。そう考えるとインディ・ジャパンで走ったベックが一番良いと思い、ベックだけに集中して交渉してきたんですが、そうこうしているうちに1週間目が終わってしまい、2週間目に入ってもぎりぎりになってしまったわけです。
オーナーのグレッグ(ベック)自身は、2週間目から始めるにしてもスポンサーを多く持ってきてくれるドライバーにしたいという意向がありました。自分が昨年のスポンサー経由で持ち込んだ家電屋さん(hhグレッグ)のスポンサーというのも、正直セカンド・ウィークのフル予算ではなかったので、結局水曜までにフル予算を持ってくるドライバーか、そうでなければ賞金を何%引いてという交渉を月曜日と火曜日に色々していたんです。話はほぼ決まっていたわけですが、賞金はかなり妥協しましたね」

Q:hhグレッグという家電屋さんは安川さんが自分で持ってきたスポンサーなんですか?

RY:「もともとは昨年僕をスポンサーしてくれた、いわゆるホームビルダーの紹介でした。その人はホームビルダーでマーケティングのことは良くわからないということで、彼のマーケティングを担当しているところに依頼してパートナーシップを組み、営業して獲得したんです。ホームビルダーのやっている、あるプロジェクトのスポンサーをするという一環で、そのパッケージの一つにレースを入れました。昨年の7月か8月から交渉を始めたので、けっこう時間はかかりましたね。でも、額はともあれ、やっとアメリカでちゃんとした企業のスポンサーを取れたということは自信を持って言えることです」



Q:昨年の7月からというと、インディ500が終わった後すぐに行動していたというわけですね?

RY:「そうですね。終わった時点で話を始めて、やっと8月くらいにアポイントメントが取れました。9月か10月にはインディアナポリスに来てミーティングをしていたという感じです。2月、3月の時点で話は決まっていたんですが、やはり予算に限りがあり、それではフル・マンスを戦えないですから、ここ以外にもスポンサーを探していました。インディ・ジャパンでスポンサーしてくれていたところが相乗りしてくれるだろうと思っていたところ、そちらのほうの話がなかなか進まなくて、結局家電屋さんのスポンサーだけで交渉しなくてはいけない状況になりました」

Q:最初の話ではインディ・ジャパンでスポンサードした企業がそのまま継続するはずでしたよね?

RY:「約束ではなかったんですね。もてぎで大々的にスポンサーしてくれたので、インディ500もスポンサードしてくれればいいなとは思っていましたが・・・・」



Q:そういう意味では、過去の5年間に比べて今年はいちばん大変な年になりましたか?

RY:「そうですね。毎年徐々に大変になってきている気がしますけど。ただ、景気が悪くなっているのに、スポンサーを獲得できたという部分でいうと、ある意味良かったほうだと思います。シリーズが合併したことによってシートにも限りがあり、なおかつそれなりの予算を持っていかないと話が決められないという方向へシリーズ自体がレベルアップしているので、出場するのは難しいですよね。シリーズのコンペティション・レベルがすごく上っているのに、景気は良くない。スポンサーでみんなが潤っているかといえば、そうではないじゃないですか。そういう部分でスポンサーの獲得は大変ですし、スポンサーが見つからないで1周も走らないまま帰ってしまったベテラン・ドライバーもいました。そう考えると、マシンに乗れたことはラッキーといえばラッキーだったと思いますね」

Q:シリーズのレベルが上ったということをどのあたりで感じましたか?

RY「まず、出場台数が増えたという時点でレベルが上ったと感じます。いつもだったら、2週目になってフルグリッドの33台まで2,3台足りないという状況でしたからね。スコット・メイヤーなんかが走ると危ないからという理由で、最後にバンプ・アウトさせるドライバーを呼んできて34台、35台そろえていたのが、今年は最初の週から確実に35台から37台はエントリーするという話でしたので、バンプ・アウトが3,4台でるということは覚悟していました。
最初の週を見る限り、チームの戦歴を考えてもデイル・コインなんかはなかなかレベル・アップしないだろうと思っていたんですけど、それが2週目にポンとスピードを上げてきたので、やはりチャンプ・カーからきたチームは決してレベルが低くないですね。スポット参戦のチームはある程度の経験からしか出来ないんですが、チャンプ・カーのチームは、チャンプ・カーで長年やっていた分、エンジニアリング能力もありますから解析力だったり、マシンを良くしていく力があったと思います。そういったことが出来るチームが最終的にグリッドを獲得できたということですね。
今年も昨年と同じ状況だったら、カンでやっているような予選のノリでも、たぶん余裕で予選を通過できたと思うんですよ。ですが、今年の状況では、特に最終日のバンプデイはみんなが難しい方向へセット・アップを持っていかざるを得ない状況だったことを考えると、確実にレベルは上っています。その中で僕はレースに参戦するためのレースに負けたという感じですね」



Q:そのような状況で2週目から出場が決まるわけですが、今までと比べて今年は自分が納得できるまで走りこめたのでしょうか?

RY:「走りこめたという部分では、確かに物足りないところがありますし、もう少し時間があればと思いました。時間に関しては限りがありますし、買えないものなので、どうやって限られた時間のなかで有効に時間を使えるかというのが、トップ・チームとそうでないチームとの差だと思うんですよね。短い時間でセット・アップ・プログラムを組んで、それにあわせた準備をすることが出来ていたのは、ペンスキーとチップ・ガナッシでした。僕達に関しては、センサーが壊れて動いていなかったので、二日間もかけて車高や空力バランスを取っている状況でした。トップ・チームだったらそんなことはストレート一本走ってくるだけで分かることを、2日間もかけてやっていたことが一番の敗因ですよね。昔は1ヶ月間走りこんで、3,4日目に帳尻が合ってきて限界が分かってきたんですけど、やはり今はそういう時代ではないわけです」



Q:では、今年は今までで一番悪いチーム体制だったというわけですか?

RY:「正直に言って一番悪かったです。水曜日からすぐ走り出せましたが、センサーがないために去年の数字に対してとか、2003年の数字に対してセッティングを進めていく感じでした。220マイル以上も出るレーシング・カーをいかにバランス良く保つかが重要なんですけど、それに2日も3日もかかって、予選日にようやく足回りをやっているのは問題でしたね。同じ車体を5年も使っているので、周りのチームはすごくシビアな中でやっています。車高をギリギリに下げた中でもピッチ角度をどれくらいにするとか、フロントとリア・ウイングの空力バランスをどのようにするかということを、まず限界まで引き出している。だから走行時間の問題ではなくて、しっかり準備をして限界を引き出すことに時間をかけることが大切でした。確かに10年前はそれで良かったかも知れないですが・・・」



Q:ベックのような10年前で時が止まっているチームは、生き残れなくなっているというわけですね?

RY:「僕はそう思いますね。それが良いとか悪いとかではなく、ベックのような経験を持っている人も非常に重要だと思いますが、彼はデータを見てどうこうできるエンジニアではないので、全くデータに興味がないんです。エンジニアリング自体には興味があるんですが、出てきたデータに対して感覚でセッティングを進めてきた人なので、チームに対してセンサーをどうしろとか言いませんでした。確かにデータだけを頼るのは良くないと思いますけど、データと感覚のバランスをとって、彼に空力のバランスが少ないと助言できる人がいれば良いチームになれると思います。ただそういうことが出来ていなかった。たぶん初日に車高のバランスが取れていたら、余裕で予選を通過できるスピードは出せていたと思うんですよ。
インディ・ジャパンのときも同じ状況で、そのときは1年以上もレースをやっていないから仕方ないと思うところもあったのですが、まさかインディ500でも同じ状況になるとは思わなかったです。でも、このチームを選んだのは自分ですし、しょうがないですね。昨年はスポットで出てくるチームでも、後ろのほうのチームは感覚でセット・アップしていたのが、今年はチャンプ・カーのチームでセンサーを1個も持っていないチームなんていないわけですよ。レベルが上っているので、出場するチームをジャッジするところは変わってきましたね」



Q:インディカーとチャンプ・カーの合併のあおりを、一番受けてしまいましたね?

RY:「そうですね。ベックのチームに関しては、もう少ししっかりしたチームだと思っていたんですが、逆に来年に向けては選択肢が増えたと思います。来年の状況は分かりませんけど、世界的に経済状態が良くない上に、チャンプ・カーのチームは今年に関してエンジンのリース代などが無料ですから、今年と同じ台数を来年も維持できるかどうかは疑問ですね。現状を維持しようと思うと2億円は必要ですから、それを用意できるかどうかという部分でいくと、来年のインディ500で出場台数を確保するのが大変なのではないかと思っています。インディカー自体が盛り上がってきていますけど、景気が良くない分スポンサー集めも大変だと思うので、来年に向けてそれなりの予算を用意できれば、良いチャンスをつかめるのではないかと思います」



Q:できることならば、シーズンを通して戦いという考えはありますか?

RY:「フル参戦したいという思いはあるんですけど、中途半端なチームでだらだらレースをするのであれば、インディ500と何戦かをピンポイントで狙い、しっかり走れる体制を組むことも良いのではないかと思いました。ですから予算しだいですよね。複数年契約のフル参戦で、ちゃんとしたスポンサーの契約が出来ていれば、ものすごくやりたいです。でも、単年度契約で予算がギリギリだとそれほど良い結果が望めないですし、数やればチャンスが増えるということでもないです。誰が勝つか分からないといっても、実際のところ勝てるチームは決まっているわけですから。シーズン開幕から10月までレースで忙しくなって、そこから営業活動を始めても手遅れになるなら、インディ500に向けたオーバルのレースに何回か出場し、インディ500でそれなりの結果が出せるレース内容をできる、(トーマス)シェクターみたいなプログラムをやるのがよっぽど効率が良いと思います。もちろん沢山出場できることに越したことはないですけどね。
今回チャンスなのかなと思えるのは、hhグレッグが満足して喜んでくれていることです。ベックのチームでは、31位のような中途半端な順位で予選を通過して、レースも12位から15位あたりを淡々と走るのが、一番良く頑張った結果になると思うんですよ。だけど、そんなことではTVには全然映らないじゃないですか。そうすると今回、バンプ・デイであれだけテレビに映ったということは、『かなり儲け』という話になってます。ポール・デイよりも視聴率が高かったですし、それをプラスに考えるしかないんですけどね。もちろんレースのときよりは観客が少ないですけど、バンプ・デイにも観客がけっこう入っていましたし、最後の20分間が盛り上がったのも久しぶりのことだったと思います。テレビにどれだけhhグレッグが出たのかという数値を出せば、投資した金額以上の効果が出ていると思います。そこから来年に向けてスポンサーを継続するか、増額になるのかは分からないですけど、スポンサーは喜んでくれていますね」



Q:スポンサーはそんなに喜んでいるんですか?

「すごく喜んでいますね。ほんとうはそこで決勝に進出するというのがベストなシナリオなんでしょうが、ただ先方が期待していた効果以上の数字は出ていると思います。残念ながら決勝には進めなかったですし、そのままお世話になりましたというのじゃ気まずいですから、契約にはなかったんですけど、デニス(レインボールド)と交渉して、バディ(ライス)のマシンにロゴを無料で貼ってもらいました。そういうところでも家電屋さんは喜んでくれましたし、感謝してくれましたね。けっこう他のチームも資金面では大変なんですよ。バンプ・デイになるとバンプ・アウトされたチームについているスポンサーを獲得するために、『よし、どこの会社に電話する?』ということになるわけです。それでも無償でロゴを貼るということはほとんどないんですけどね」



Q:残念ながら今回は出場を逃しましたが、これまでインディ500に出続けて、安川さんはいまや職人的な位置に来ていますよね。今回一番つらい6年目となったなかで、来年に向けてこの経験を活かしたビジョンはありますか?

RY:「毎年良い経験ではあるんですけど、今年は特に良い経験になりました。ただ、バンプ・アウトされたから開き直っていえるのが、毎年限られた予算のなかでどうやって戦おうというのでは目標も限られてしまうので、それならば自分のチームを持つぐらいの考えもあります。そこに目標を持っていかなくてはいけないですね」

Q:チーム・ロジャー安川ということですか?

RY:「例えばどこかとのチームとタイアップしてということになると思うんですけど。ワンオフの出場にとって面倒で大変なのが、ハーフ・ミリオン(1ドル=105円で約5250万円)払って出場しても、マシンはチームのものだということです。チームにとって見れば、資金を持ってくるドライバーはウェルカムだけど、こちらは限られた予算しかないのに、クラッシュしたらどうだとか、賞金を妥協しなくてはいけないだとか、そういったことで交渉がごたごたするならば、タイアップでマシンを買い取ってしまうのも一つの手だと思います。レースの後で必要なくなれば売れば良いですし、そういう交渉ごとは面倒だなという結論に達しましたね」



最後に“チーム・ロジャー安川”という驚きの構想を語った安川。決勝出場はかなわなかったものの、初めて経験したバンプ・アウトから教訓を活かし、インディ500に帰ってきてくれるはずだ。2009年のインディ500では、日本人初のオーナー兼ドライバーが見れるかもしれない。



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